★散歩をしていたきのうの朝のことだった。前方に犬連れの男女が現れた。遠目では、中年夫婦、犬はおそらくイエローのゴールデンか。リーシが長い、あの長さではいざというときに犬を制御できないだろうなぁ・・・などと思ううちに互いに近づいていく。
と、まもなくその夫婦こちらに背を向けなにやらゴソゴソ。男性がこちらに背を向けしゃがみこむと、ああそうか、犬を抱きかかえようとしていた。同時に中年の女性が、男性を後ろ手にかばうように、こちらをにらみつけながら立ちふさがった。
やがて、こちらも近づき彼らを追い越そうとしたそのときだった。女性が突然大声で『このコは黒ラブに咬まれたんですよ!』。
その悲鳴にも似た言い方は、まるで名指しで『その黒ラブに咬まれた、どうしてくれる』とでもいっているようだ。たしかにウチのは真っ黒のラブラドールで、しかもでかい。見た目はおそろしいかも。
だからといって黒ラブすべてを目の敵にしなくともいいんじゃないの?
咬んだ黒ラブが悪いとしましょうか、そりゃ、咬んだんだから。でもね、咬まれたほうにも責任がまったくないとはいえないね、ぼくからいわせりゃ。
★第一の責任・・・リーシが長い。
遠目でみた時に“長いな”と思ったものだった。
犬によっては、状況によっては飛びつくこともあるだろうし、さらに吠えかかることもあるだろう・・・まさかのときにリーシが長くては犬を引き寄せることもできやしないではないか。
最近目に余るのは犬を連れながらの携帯メイルの女性たち。携帯に見入り、指を動かすことに気をとられ、犬がどこに向かおうとお構いなしだ。そして犬種もチワワ、プードル、ミニダックスなどの小型犬。これがご主人のわきにピタッをついて歩いているのを不幸にして見たことがない。そして、この手にかぎってリーシが長い。あっちにチョロチョロ、こっちにチョロチョロ。そして飼い主の関心は携帯に。
こんな記事を見た・・・自転車に乗っていた人が、犬に驚いて転倒した。それでも犬の飼い主に賠償金の支払い命令が出たという。別に犬が吠えかかったわけでもないのだが、わずかにリーシが長かったため自転車のほうに寄ったらしい。それだけで驚いた自転車側がバランスを崩したのだ。
犬を飼うということは、そして連れて歩くといくことは、それなりの責任が発生してしまうんだということを、このご夫婦はどう思っているのかしら?
★第二の責任・・・犬を抱いた。
犬は必死になると、かなりの力を出すものだ。状況によっては飼い主に咬みついてでも飼い主の腕から飛び出すだろう。
ましてやゴールデンくらいのサイズになれば、いざというとき制御できるものではない。
ぼくはどうするかといえば、踏みつける。リーシをしっかりと引っ張るように握って、チョーカーの首元をしっかりと踏みつける。首に近いところであればあるほど、これで犬は動けない。どうしても犬を制御できそうもない、と思ったときは断固こうする。
ただし、こんな目に合わされても犬が“発狂”しないよう、あらかじめふだんから訓練しておかなければならないのだが・・・。日常的に、たまにこの訓練をしては、そのたびにビスケットをあげている。
犬と人間との間に民主主義はない。あるのは主従関係だけだから。
★さて、さきほどの“黒ラブ目の敵夫婦”だ。
かれらは自分たちが犬のしつけを怠ったために、飼い犬が咬まれたとは、おそらく夢にも思っていまい。そこからいろいろ想像される。
おそらく、ほめるよりしかるほうが多いんだろうね。
おそらく、人間のたべものを少なからずあげているんだろうね。
おそらく、散歩のコースも時間帯も決まっているんだろうね。
おそらく、いっしょに寝ているんだろうね。
おそらく、家族だと思っているんだろうね。
・・・だから、『咬まれた!』といって非難するんだ。了